■ カンボジアに埋まる地雷
silent killer - もの言わぬ殺人者
戦いが終わってもなお戦争の副産物として、そこに住む人たちの平和を脅かす地雷。ポル・ポト時代、そしてその後20年近くにも渡って続いた内戦により、カンボジアには今もなお35種類600万個の地雷が埋まっているという。
プノンペンにある「カンボジア地雷対策センター」には、カンボジアに埋まった様々な種類の地雷の展示がある。地雷には種類によりその殺傷能力、使用目的が異なる。旧ソ連製の火薬わずか200gの小型の地雷は、敵の足だけを吹き飛ばし戦闘能力を奪う。アメリカ製の地雷はワイヤーに引っかかると750発もの小さな鉄球が一気に発射し、敵を死に至らしめる。実験の映像から、一瞬にして分厚い鉄に無数の穴が開くという凄まじい威力を見せつけられる。中国製の地雷が撤去にあたって最も厄介だという。それは、簡単に除去されないように11度傾けただけで爆発をするという「工夫」がされているためだ。
■ 地雷撤去作業
従来の地雷撤去というのはまず、手作業で地雷原に密生する草木を取り除き、地面をあらわにすることから始まる。それだけでも危険は伴い、地雷撤去という作業で命を落とす危険も大いにつきまとう。なのに途方に暮れてしまうほど地道な、そしてカンボジアの暑い気候のを考えると恐ろしいほど気の遠くなる作業。その繰り返しでこの10年間に撤去された地雷は31万個。
そしてまだこの地にはそのおよそ20倍もの地雷が埋められている。
■ カンボジアの地雷と戦う日本人エンジニア・雨宮清さん
23歳でエンジニアとして建設機器会社を設立し、順風満帆な人生を歩んでいた雨宮さんは12年前、47歳のときに仕事で初めてカンボジアを訪れ、想像を超える貧しさと、地雷で手足を失った子どもたちを目の当たりにする。そのときの"もし自分の家族が地雷の被害にあったら自分はどういう思いをするだろうか"という気持ちが技術屋である雨宮さんのプライドに火をつけ、なんとか地雷撤去を成功させたいと強く思ったという。
それから爆発による衝撃や熱に絶えうる地雷処理機を造り、地雷を取り寄せ何度も耐久テストを重ね、改良し1998年に第一号機が完成、1999年よりカンボジアで処理を開始。現在では世界6カ国で54台の地雷処理機が活躍しているそう。
地雷撤去に携わって8年、地面を掘りながら、同時に地雷を撤去するという雨宮さんの地雷処理機は、従来の手作業の20倍のスピードでの作業を可能にし、地雷を爆破してから除去できるようになったため、安全性も格段に向上したという。
雨宮さんの熱い想いは地雷撤去のみに留まらない。彼の作り出した地雷処理機には、地雷処理後、農地としてその土地を整備し耕せるように農耕用アームもついている。番組中、5年前に地雷撤去を行ったという元・地雷原へと雨宮さん一行は向かう。その土地は現在美しい畑となっていた。これが本来のカンボジアの緑豊かなあるべき姿なのだ。いとおしそうにその畑を見つめる雨宮さんの眼差しが印象的だった。
■ 地雷と先進国
番組を見ていて、以前、ジャーナリスト・高野孟氏の著書「最新・世界地図の読み方」を読んで衝撃を受けた章を思い出した。「"死の商人"たちのノスタルジア? 冷戦後も増え続ける先進国の武器輸出」と題され、その中で高野氏は武器輸出国上位6カ国のアメリカ(アメリカが全体の約50%近くも占めている)、ロシア、イギリス、フランス、ドイツ、中国のうち、ドイツを除く5カ国は核保有国であり国連安保常任理事国で、結局のところ彼らは武器を売り戦争や紛争のきっかけを作り、いざ戦いが始まれば正義の味方として登場し、武器を消耗し・消耗させ、また新しい武器を自国から調達させて外資を稼いでいるのだという。
さらに正式に数値化されない密輸も多く、特に深刻なのは技術的にも簡単に量産でき、価格も安く、需要の多い地雷の拡散が深刻であると指摘する。
「多くの先進国を含む約50の地雷輸出国は「内戦が続いて難民がかわいそうだ」とか言いながら、陰では地雷を売って外資を稼いでいる。値段が安いので有名なのは中国製で一個3〜4ドル、性能のいいベルギー製は高いが5,000個まとまると一個6.7ドルにサービスしてくれる。アメリカ軍が最近、100万個を調達した対戦車・対人地雷M77は一個11.2ドルだった。...... 赤十字国際委員会のレポートでは、これも正確な統計はとりようがないのだが、全世界の約70カ国で少なくとも月に2,000人、つまり20分間に1人が地雷に触れて死んだり脚を飛ばされたりしている。」
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タイ国境にほど近いマライ郡は、カンボジアでも最も地雷が多く埋まっている地域だそうだ。至る所に「danger! landmine! (危険! 地雷!」と書かれた赤い不気味な立て札が立っている。車が地雷原を避けて走るのも一苦労といった所、まさにその地雷原の中に住んでいる人たちがいる。インタビューに応じる女の子の言葉が忘れられない。"地雷は目に見えないから怖くない。(脚を失ったり死んでしまう人もいるけど)仕方がない。だって他に住むところがないから。"その笑顔はとても哀しい笑顔だった。
※ 雨宮さんの回は来週4月30日にも続くそうです。
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references:
■ TBS 夢の扉
■ 「最新・世界地図の読み方」 高野孟著・講談社現代新書
■ ストックホルム国際平和問題研究所 (英語)
83式地雷敷設装置と94式水際地雷敷設装置は
どこの会社が作っているでしょうか?
投稿情報: hiro | 2007年6 月 8日 (金) 00:36
はじめまして。
ちょっと詳しく知らなかったのですが、調べてみたらどちらもどうやら日立のようですね。雨宮さんももともと日立の方ですし(たしか・・)、かなりチカラをいれているようです。
参考までに:
◆ http://ja.wikipedia.org/wiki/83式地雷敷設装置
◆ http://ja.wikipedia.org/wiki/94式水際地雷敷設装置
投稿情報: リサ | 2007年6 月16日 (土) 16:05